人工知能が専門家に代わって微化石の分析を行う実証試験に成功!

地層中に大量に保存されているプランクトンなどの微小な生物の化石は、微化石(びかせき)と呼ばれています。微化石は、地層の堆積した年代や当時の環境を知るための重要な手掛かりとされ、石油や鉱物資源の探査にも利用されてきました。しかし、これらの微化石の種類の鑑定には、豊富な知識と経験を持つ専門家の手を借りなければならず、また多大な時間と労力を要します。

最近になって、微化石を自動で鑑定・収集する人工知能を搭載した顕微鏡システムが開発され、その実用化が目前となりました(Itaki et al., 2020, doi.org/10.1186/s40645-020-00332-4)。更にこのほど、産業技術総合研究所、NEC、高知大学、JAMSTECの研究グループは、このシステムを用いることで大量の微化石を自動で鑑定して種類毎の存在量を推定する実証試験に成功し、その成果が12月3日付けのScientific Reports誌に発表されました(doi.org/10.1038/s41598-020-77812-6)。

南大洋の海底から採取されたコア(地層を柱状に抜き取った堆積物試料)に含まれる微化石のうち、放散虫というプランクトンの1種であるCycladophora davisiana(サイクラドフォーラ・ダビシアナ)の存在量の変化を調べたところ、このシステムを用いて得られた推定値が専門家による鑑定結果の±3.2%に収まりました。これは、微化石を分析する上で十分に高い精度であると言えます。また、システムによる鑑定作業は、専門家が同じ作業を行う場合に比べ約3倍の速度で行うことができます。

これによって地層解析の効率性が飛躍的に向上し、これまで困難であった超高解像度の微化石分析が可能となります。また、専門家が不在でも精度の高い分析が期待できるため、広域的な資源探査などへの展開にも道筋が拓けたことになります。

 

図.コンピューター制御の自動顕微鏡で収集した画像からディープラーニングにより微化石を自動で鑑定し、その存在量を推定します。

 

古海洋班の板木さんらが中心となって公表したこの論文の情報は,以下の通りです.

Takuya Itaki, Yosuke Taira, Naoki Kuwamori, Hitoshi Saito, Minoru Ikehara, Tatsuhiko Hoshino (2020) Innovative microfossil (radiolarian) analysis using a system for automated image collection and AI-based classification of species. Scientific Reports 10, Article number: 21136. www.nature.com/articles/s41598-020-77812-6

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です